「龍爪梅花皮」これは「りゅそうかいらぎ」と読みます。「龍爪」とは作品の個性である龍の爪のような模様を言い表しており、「梅花皮」とは、釉薬のちぢれのことをいいます。

岩崎政雄作品はよく奇跡の陶器と評されますが、この奇跡とは「梅花皮」の出来栄えのことです。釉薬を使う陶器の場合、焼成中に釉が素地の上で縮んでしまう現象が起きてしまうことがあり、こうなると作品は失敗となってしまうことから作家はこのちぢれを嫌うのです。

岩崎政雄はこの作家が嫌うちぢれの現象に注目し、これをなんとか模様に活かせないだろうか。と、逆転の発想を得て構想から10年の試行錯誤の果てに完成したのが、この龍爪梅花皮なのです。

特徴は龍の爪模様もさることながら、雪のように白い陶肌です。白磁とはまた違うこの質感は例えるなら赤ちゃんのお肌のように艶々しています。その白にほとばしる龍爪模様は大地を縫う峡谷のようにたくましく、また岩崎政雄しか作れない赤の梅花皮は命の支える血管のように貴く美しいものです。

複雑な工程を経て出来上がるこの「龍爪梅花皮」は窯出し時に半分以上が失敗作となるほど難しく、様々な諸条件もからまりあって、決して同じものは出来上がりません。いつしか奇跡の陶器と呼ばれ始めた「龍爪梅花皮」は、人知を超えた幸せな巡り合わせの賜物なのです。
